事件

15歳少女を2年間…寺内樺風容疑者の“変質的な素顔”(1)普通の大学生活を送っている裏で…

15歳少女を2年間…寺内樺風容疑者の“変質的な素顔”(1)普通の大学生活を送っている裏で…

 エリート高校から千葉大工学部へと進み、「学業」と「犯罪」を両立していた鬼畜の手から、2年ぶりに少女が生還した。同類の事件で思い出されるのは00年に発覚した新潟の事件。その犯人Xの母と接触、現場の部屋にも足を踏み入れた窪田順生氏が、逮捕された寺内樺風容疑者の変質性の秘密を暴いた!

「中学の頃から女性を誘拐したいという願望があり、ネットで誘拐する場所を探し、少女を見かけ、自宅まで尾行した」

 2014年3月、埼玉県朝霞市の自宅近くを歩いていた中学生のAさん(当時13歳)を誘拐し、自身が通う千葉大学のキャンパスに面したアパートに2年に及んで「監禁」をしていたという寺内樺風(かぶ)容疑者(23)は、**の取り調べでみずからのゆがんだ性癖についてこのように吐露したという。

 いまだ謎の多いこの事件だが、この供述が事実だとすれば、寺内は10年近くもどす黒い欲望を抑え込んで生きてきたわけだ。

 ただ、そのような寺内の「心の闇」よりも私が衝撃を受けたのは、この男がそのような異常性を周囲に悟られることなく、みごとに世間を欺いていたことだ。

 事件後、マスコミに登場する千葉大同級生の多くは、寺内を「普通」と評している。親しい友人も、「家で飲もうという話になったら『汚いから』とやんわりと拒否された」などの逸話を明かしているが、寺内の小児性愛、いわゆる「ロリコン」的言動は把握していない。実際、テレビニュース等には軽自動車で友人とドライブを楽しむ寺内の映像が流されたが、そこで友人とたわいもない会話をする寺内は、「今時の大学生」にしか見えない。

 実際、寺内は実にありきたりで、自然な学生生活を送っている。少女を閉じ込めていた時期、2泊3日のゼミ合宿にまで参加。ゼミ担当教授は大学側の会見で、「ごく普通の学生で成績は中ぐらい。無断欠席はなくきちっとしていた。礼儀正しい学生だった」と述べ、現在は留保されているが、この春には「卒業」もしている。

 寺内は2年にわたって「学業」と「監禁」という卑劣極まりない犯罪を両立させていたことになるのだ。

 これには本当に驚いた。なぜならば、私がよく知る「監禁男」というのは、決してそんな器用な立ち回りをすることはできず、あらゆる面で寺内の対極にいるような人間だったからだ。

 その「監禁男」とは、今から16年前の2000年1月に発覚した「新潟少女監禁事件」の犯人・Xである。28歳の時、小学4年生(当時9歳)の少女を誘拐し、住宅街にある民家2階の八畳間で9年2カ月にわたって「監禁」をしたXは、懲役14年の服役中に精神異常を来し、現在は「障害者」として出所後に更生の道を歩んでいる。 

 覚えている方もいるだろうが、Xは「ひきこもり」だった。幼い頃から病的なまでの潔癖症だったが成長をするごとに重症化し、高校卒業後は、友人との関係を全て断ち切り2階の自分の部屋に閉じこもる。母親が2階に上ってくることすらもきつく禁じたのである。当然、友人はゼロ。近所の住民からも、「もう何年も姿を見かけていない」と言われるような存在だった。

 ただ、そんなXにも楽しみがあった。自家用車でのドライブだ。外の世界は「汚れている」とめったに出歩くことはなかったが、車ならばどこへでも出かけることができたのだ。「ひきこもり」生活が10年過ぎたあたりで、ひとりでドライブをした休憩中、目に入った少女を誘拐したのである。

 犯行に至った経緯からもわかるようにXには社会性のかけらもない。卑劣な犯罪を行いながら、「学生生活」や「友人づきあい」をそつなく続けていた寺内とは「真逆」とも言うべき人間なのだ。

◆窪田順生(ノンフィクション作家) 1974年生まれ。「フライデー」の取材記者、月刊誌編集者、全国紙記者などを経て、ノンフィクション作家となる。「14階段─検証 新潟少女9年2ヵ月監禁事件」で小学館ノンフィクション賞受賞。

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