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新日本プロレスVS全日本プロレス<仁義なき50年闘争史>「長州問題解決!! 超獣と呪術師が全日本復帰」

新日本プロレスVS全日本プロレス<仁義なき50年闘争史>「長州問題解決!! 超獣と呪術師が全日本復帰」

 1987年5月12&13日の新日本プロレス2連戦。長州力は全日本プロレスとの契約問題をクリアしないままリングに躍り込み、藤波辰巳(現・辰爾)、アントニオ猪木にラリアットをぶち込んで強行突破した。

 これにはジャイアント馬場が「何も決まらないうちにここまでやられたら俺も立場がない。もう静観の時は過ぎた。話し合いもするが、手続きも踏んでいくことになる」と態度を硬化させ、新日本は長州乱入のシーンをカットして札幌大会を放映するという形で、馬場と全日本に誠意を見せた。

 新日本にはどうしても長州を出場させたい事情があった。藤波が左足脛骨剝離骨折によって札幌2連戦後から欠場、前田日明も胸部剣状突起骨折で5月27日の大分大会から欠場に追い込まれてしまったからだ。

 そうした中、馬場と猪木&坂口征二の協議は続き、6月1日の愛知県体育館から長州が2年8カ月ぶりに新日本のリングに復帰。スーパー・ストロング・マシンと組んで坂口&ジョージ高野と対戦した長州は、ラリアットで高野を豪快に粉砕した。

 この日の復帰について、馬場は「ここで長州を出すということは、新日本はよほど苦しいんじゃないの? まあ、俺の姿勢は一貫して変わらんということで、法廷措置云々はやるにしても黙ってやりますよ」とコメント。その穏やかな口調から〝口外無用〟の条件を提示して新日本がそれを吞んだことがうかがわれた。

 長州の復帰によって新日本マットは新日本正規軍、前田率いるUWF、長州率いるニュー維新軍による群雄割拠の戦国時代に突入。長州が藤波、前田らに呼びかけて軍団の枠を超越した世代闘争が勃発したが、長州がテレビ朝日の中継に登場することはなかった。

 リング復帰は容認されたものの、テレビ問題はクリアされなかったのである。

 金曜夜8時のテレビ朝日「ワールドプロレスリング」は86年10月16日に月曜夜8時に移行。87年4月7日には火曜夜8時に移行し、バラエティー色の強い「ギブUPまで待てない‼ ワールドプロレスリング」に番組名が変わった。

 長州が「ギブUPまで」の画面に登場したのは8月4日。オープニングで6.22両国国技館における長州の呼びかけで藤波、前田らのニューリーダーが決起するシーン、番組のオープニングテーマに乗って両国の花道を疾走するシーン、そしてエンディングでは花道を引き揚げるシーンで、3つ流れたが、試合の放映はなし。

「シリーズの総集編で、世代闘争が長州の呼びかけでスタートしたので、締めくくりとして出さざるを得なかったんです。試合の放映の見通しは、まだ立っていません」と、番組担当の木村寿行プロデューサー。

「ギブUPまで」は視聴率5~6%で低迷、10月5日から再び「ワールドプロレスリング」として月曜夜8時に戻ることになり、その目玉となったのが第1回放映からの長州のテレビ朝日復帰だ。

 これは馬場が9月24日、キャピトル東急ホテルでマスコミとの懇親会において「このまま放っておいても俺が悪者にされるだけだし〝今後は、こういうことのないように〟ということで勘弁することにした」と話したもので、具体的な解決の条件は明かされなかった。

 テレビ朝日は10月5日の月曜夜8時復帰第1弾を2時間スペシャルとして、第1部=前日行われた猪木VSマサ斎藤の巌流島の決闘、第2部=春からこれまでの長州特集、第3部=後楽園ホールから長州VS藤波の生中継という形で放映。ニールセン=14.8%、ビデオリサーチ=11%と「ギブUPまで」の2倍以上の視聴率をマークした。

 さて、口外されなかった長州リング復帰の条件、馬場が明かさなかった長州のテレビ朝日復帰の条件は何だったのだろうか?

 巌流島の決闘が行われた10月4日、全日本の伊勢崎市体育館には日本マット追放となったはずの〝超獣〟ブルーザー・ブロディが乱入。2年7カ月ぶりに全日本に電撃復帰を果たした。

 さらに暮れの「世界最強タッグ決定リーグ戦」にはブロディだけでなく、〝呪術師〟アブドーラ・ザ・ブッチャーが実に6年半ぶりに全日本に復帰。11月22日の後楽園ホールではファンクスとブッチャーの抗争が復活し、タッグ公式戦という形でスタン・ハンセンVSブロディの夢の対決が実現した。

 ブロディもブッチャーも最後に参加した日本の団体は新日本。新日本と全日本の引き抜き防止協定書では両者ともに新日本に属していて、全日本が声をかけるのは協定違反だ。

 つまり、新日本がブロディとブッチャーの全日本復帰を認めることが長州問題クリアの交換条件だったと考えられる。

 全日本復帰を望むブロディはテキサス州ダラスのフリッツ・フォン・エリックとザ・グレート・カブキを通じて馬場にアプローチ、かねてから全日本復帰を熱望していたブッチャーも夢が叶った。恩赦された2人は馬場への忠誠を誓った。

小佐野景浩(おさの・かげひろ)元「週刊ゴング編集長」として数多くの団体・選手を取材・執筆。テレビなどコメンテーターとしても活躍。著書に「プロレス秘史」(徳間書店)がある。

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